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読書散歩 #73

読書散歩 第73回
学校の図書館の「朝井まかて」さん

朝井まかてさんの小説は、
私の大好きな時代小説のひとつです。
朝井まかてさんは、いろいろなジャンルの時代小説を書いておられ、
そのどれも、主人公となった人が
人知れず悩み苦しんでいるその気持ちを汲み取り
あたたかく包み込んでしまう展開になっています。

今までにも第47回で「ぬけまいる」「すかたん」「阿蘭陀西鶴」、
第48回で「先生のお庭番」、
第53回で「花競べ」「恋歌」「藪医ふらここ堂」、
第63回で「眩」、第64回で「残り者」と
多くの作品を紹介してきました。
この3冊も学校の図書館でお借りしました。

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銀の猫
朝井まかて 文藝春秋


「銀の猫」は、岩崎東里先生からの紹介です。
介護をテーマにしたものです。
兵庫県播磨高等学校と同じ系列の
ハーベスト医療福祉専門学校には
「介護福祉学科」があり、介護福祉士の養成をしています。
学生は、介護福祉士の資格取得を目指して
一生懸命に勉強や実習をしています。

 「江戸の町は、長寿の町だ。子供はふとした病で
  あっけなく亡くなるけれど、
  五十過ぎまで生き延びればたいていは長生きで、
  七十、八十の年寄りはざら、百歳を過ぎたものもいる。」

と本には書かれており、そのような前提で話が進みます。

主人公のお咲は、年寄りの介護をする
「介抱人」とよばれる職についています。
口入屋「鳩屋」の主人に温かく見守られながら、
だらしない生活を送っている母親の
つくった借金を、払い続ける生活を送っています。
義父の介護をした時にもらった銀で作られた猫を
お守りにしてお咲は頑張ります。

お咲が泊りがけの介護をした一人の隠居「おぶん」も
なかなかいい役割を演じています。
お咲が母親のわがままに耐え切れなくなった時、

 「あんまり辛かったら離れたっていいんだよ。
  母親を捨てたってことを、
  決してくいないってぇ覚悟さえあれば。」

という一言、
道楽で介護を始めると宣言し、

 「あたしはね、ずっとどうなんだろうと
  思ってきたことがあるんですよ。
  親の介抱に尽くした者ほど、
  自分は誰の世話にもなりたくないと口にする。
  これが務めだと思って自分はしたけど、
  うちの子には同じ思いはさせたくないって・・・・・・
  これって、どうなんだろう」

という一言。
このような一言一言をかけられ、お咲は気分を新たに
前に進めたのではないだろうかと思います。



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落陽
朝井まかて 祥伝社


この本は新聞広告で見て、岩崎東里先生にお願いしてお借りしました。

朝井まかてさんの時代小説の好きなところは、
「口には出さないけれど、その人のことを気にかけ、
思っている人と人との気持ちのやり取りが素晴らしい」ところです。

親子であることが多いように感じますが、
今回の主人公は明治天皇です。

幕府が倒れ、新政府になり京都から東京へ、
また、突然に政治の世界に身を置かれてのご苦労など、
明治神宮を東京にという人の思いを
新聞記者の瀬尾亮一が追いかける展開です。

明治神宮の森を150年の長い年月の末に完成させる
長大な計画については、
以前「歴史秘話ヒストリア」で見て知っていましたが、
改めて文で読んでみて考え方に驚き、感心してしまいました。

従来の概念で
「伊勢神宮等のように神宮林は針葉樹でなければならない」
と考える首相大隈重信に、

 「では、神宮林苑に杉を植えるとしたとしましょう。
  その何千本が枯れてしまった場合、いや、
  間違いなく枯れるのでありますが、
  あなたはその責任を御取りになれるんですね」

と言って広葉樹林の神宮林を承諾させた話は、
その自信と気概に感心してしまいます。

また、瀬尾亮一が元女官だった女性との話の中で、

 「明治天皇は近代国家の君主として、
  西洋の新しきを率先して採り入れられたのではありませんか」

 「事と次第によります。先ほども申した通り、
  聖上にとっての神事は他のこととは違います。
  まず形が大事やというのに、
  その形が変えられてしまいましたのやから。
  いかに近代化といえども、
  時代に合わせて儀式や作法を変えるなど以ての外や。
  永世不変の形、それこそが正しい形です」

の話には考えさせられました。

日本のこと、国民のことを思っておられた明治天皇の
想いを追い続ける記者魂にも感心しました。


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最悪の将軍
朝井まかて 集英社


「犬公方」として有名な、日本史の授業でも
「人間より犬を大事にした将軍」「生類憐みの令」
と教えられた徳川綱吉の物語です。

将軍になりたいとも、順番からも到底なれないと思っていたところ、
「強き将軍に成りて、天下を束ねよ」「太平の世を」という
遺言のような言葉で五代将軍になります。

まだ戦のために命を捨てることを厭わない考えを
多くの武士が持っていた時代に
戦のない庶民が平和に暮らせる太平の世にするために
いろいろと考えます。
人の命を大切にするためには、
犬などすべての命を大切にするように指示をしますが、
そのことが曲解され人より犬が大切という事態が生じます。

あわせて忠臣蔵で有名な赤穂浪士の討ち入りや、
富士山の噴火や地震が起こり、
さまざまな陰口をたたかれた将軍ですが、
太平の世をつくるために・・・・・。

正室信子とともに祈る場面の、

 「天下をお預かり申す徳川右大臣綱吉が願い奉る。
  すべての災厄は、余の一身にてお受け申し上げる。
  ゆえにこの国の民に、今一度、生きる場をお与え給え」
  信子も気を整え、頭を垂れる。
  が、どうしたことだろう。胸の中で逬ったのは、
  挑みかかるような思いだった。

で、全て語られていると思っています。
このような人の思いや心の展開が
朝井まかてさんの素晴らしいところと感じています。
プロフィール

兵庫県播磨高等学校

Author:兵庫県播磨高等学校
2021年に創立百周年を迎える兵庫県播磨高等学校です。
「読書の学校づくり」を推進中です。

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