読書散歩 #69

新橋駅前の古本市で
Selected by安積秀幸参与先生

プレゼンテーション1_convert_20170209191437


久しぶりに恩師である米山徹先生とお会いする機会を得ました。
米山先生からはお会いするたびにいろいろと教えていただきます。
今回もそうでした。
米山先生とは、新橋駅のSL前で
待ち合わせをすることになりました。

会議が少し早く終わって新橋駅に着き、
「さてさて何をして時間を・・・」と思ったのですが、
改札を出ると古本市が開催されていました。早速うろうろ。

そこで見つけた二冊と、
米山先生から教えていただいた一冊を紹介します。





46804_convert_20170209191454.jpg

木米と永翁
宮崎市定 著 (中公文庫)

古本市で、この文庫本は200円でした。

宮崎市定先生は、「謎の七支刀」、「水滸伝」や
「論語の新研究」でも紹介しました。
「木米」は「青木木米」、「永翁」は「永楽二代和全」と言われていました。
この永翁が「村田熊治郎」であったことを
調べられたことが書かれています。

宮崎先生独特の言い回しで、
観点で美術品や芸術品と呼ばれている
一つ一つについて書かれていることは、
読んでいて痛快です。続いて書かれている随筆にも、
その一つ一つに「なるほど」と思ってしまう一言があります。

収録されている「コレクション」では、
物を評価することは、人間生活の上で、
物質面でも精神面でも、非常に大切な意義をもつ。
野菜や缶詰を買うときの選別も評価であるし、
衣服や装飾品の見立ても評価であって、
美術の鑑賞と本質的に異なるところはない。
ところで博物館や展覧会で陳列品に対面するとき、
多くの場合はガラス越しでしか観察できず、
手に触れることはおろか、
虫眼鏡で見る距離まで近付くことすら許されない。
これでは十分な鑑賞ができにくい。
特にそれが陶器や玉器である場合、
いちど手に取って撫でまわしてみないと
感触が伝わってこないものなのだ。
と言っておられます。全く同感です。

第62回で紹介しました小林泰三さんの
「誤解だらけの日本美術」と
同じような気持ちで読ませていただきました。

そのあとも、気になる言葉のところに付箋を貼ったのですが、
付箋だらけになってしまいました。

解説には、
先に出版された「中国に学ぶ」は難解なところがあるが、
「随想 木米と永翁」は全編を通じて
読みやすいエッセイ集になっていると書かれています。
そのことを感じながら楽しく読むことができました。




11663274_convert_20170209191248.jpg

古窯百話 幻の壺
本田静雄 著 (淡交社)


古本市で、この本は300円でした。

古本というのは時々
本当におもしろい付録が付いてくるものです。
第52回で紹介した「ものいわぬ壺の話」にはさまれていた
謹呈の付箋にインク消で消されていた言葉も、
すばらしい付録です。

この本には著者の本田静雄さんの訃報の
新聞記事の切り抜きがはさんでありました。
この切り抜きが買うきっかけの一つでした。
「11.5.7」と手書きで書き込まれています。
その記事には、
 財界活動のほか、陶芸、能などの文化に造けいが深く、
 陶芸家の故・加藤唐九郎さん(85年死去)が作った
 贋作(がんさく)「永仁の壺(つぼ)」が59年に
国の重要文化財に指定された後、
親交のある唐九郎さんに真実を語るよう働きかけ、
その後も壺を保管していた。
と書かれています。

著者が「黒い壺」と名付けた壺と
「永仁の壺」の経緯といくつかの随想があります。

「永仁の壺」では、
「もともとこの事件は関係者が多数で、
 私自身も関係者の一人ではあるが、
 私にはとてもその真相を完全に捉えることは
 今でもできないでいる。
 しかし、この問題に関する記録をいろいろな角度から見て
 後に残しておくことは、
 将来この事件が一つの社会現象として究明されるような場合に
 必要なことであると思う。」
という言葉から、事件の初めから終わった後までの
かかわりを書かれています。

その中で最も興味深かったのは、
加藤唐九郎さんに真実を話してもらうことがいいのかどうかを、
第52回で紹介した付箋の狩野近雄さんを訪問され、
相談されたところです。

事件が落着した後、
この永仁の壺を買い取って保管されていた話や、
そのレプリカがよく売れた話も大変面白い話です。

文化という大きな流れの中で、
一つ一つの文化財の在り方についての
本田さんの考え方は素晴らしいと感じています。




177284_convert_20170209191331.jpg

文字答問
白川静 著 (平凡社ライブラリー)


この本は米山徹先生に紹介していただきました。
久しぶりの一献を傾けながらの楽しい時間に、
「漢字『菊』の読みの『きく』は音読みなんだけれど、
 訓読みを知っているか?」
と聞かれました。
「『菊』は訓読みではないんですか?」という会話から始まって、
「新橋に来る途中の本屋さんで見つけた。」といって
この本を見せていただきました。

米山先生から教えていただくときは、いつもメモ用紙を忘れて、
割りばしの袋にメモをしてしまいます。今回もそうでした。
しかし、帰ってからいくら探してもメモした袋が見つからず、
電話で改めてお聞きしました。

この本は『桂東雑記』の巻末に、講演の際の質疑、
手紙などによって寄せられた質問に
答える形で書き下ろされた「文字答問」を
まとめたものと書かれています。

いつもの通り最初に「あとがき」を読んでいますと、
白川静さんは
音で読むと名前が一時違いである
フィギュアスケートの荒川静香さんのファンでした。
亡くなった年に散歩途中で九十六歳の白川静さんが、
荒川静香さんのトレードマークであるイナバウアーを
やってみせたという話が残っている、
という白川さんの面白いエピソードが書かれていました。

目次をみていきますとなかなか興味深い、
面白い話が並んでいます。
「かかし」はなぜ「案山子」と書くのか、
「隣と鄰」で引き合いに出される頼山陽の話、
「犬の耳」で書かれている漢字の成り立ちと
日本の漢字行政の在り方……など
考えさせることが多い本です。

漢字の成り立ちの説明では『説文解字』がよく出てきます。
友人が「永久貸与」と言ってくれている
『説文解字』を見ながら読まないと
面白さが半減する。」と思いながら、
電車の中ではできずにいました。
再度『説文解字』を横に置いて、
読み返したいと思っています。

説文解字(鄰)_convert_20170209223835







* 「読書散歩」とは?
プロフィール

兵庫県播磨高等学校

Author:兵庫県播磨高等学校
2021年に創立百周年を迎える兵庫県播磨高等学校です。
「読書の学校づくり」を推進中です。

カテゴリ
最新記事
月別アーカイブ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR