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読書散歩 #83

読書散歩第83回
小説のなかに見つけた“名表現”
〜万城目学さんの小説2編


万城目学さんの小説は、「鹿男あをによし」や
「プリンセス・トヨトミ」など、
皆さんも良くご存じでしょう。
以前にも第37回で「城崎裁判」を紹介しました。
万城目学さんの小説の奇想天外な展開には
いつも驚かされています。
「よくこんなことを思いつかれるなあ」と感心し通しです。
この奇想天外な小説に、私などが思いつかないような
素晴らしい表現を見つけました。
その表現を紹介しましょう。


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偉大なるしゅららぼん
万城目学 集英社文庫


今回の「偉大なるしゅららぼん」もそうで、
奇想天外な話です。

「しゅららぼん」とは何だと思われますか。
全国の湖には「湖の民」がいて、
ある特殊な能力を持っているという設定です。
琵琶湖の「湖の民」がその特殊な能力を使った時に
聞こえる「音」が
「しゅららぼん」なんです。

琵琶湖の「湖の民」同士の争いのような展開で話は進んでいきますが、
実は八郎潟の「湖の民」と琵琶湖の「湖の民」の
争いだったという展開も驚きでした。

私は昔から読書感想文を書くのが大嫌いでした。
いつも学校で出される宿題に、
いやいや書いていたのですが、
その度に「君の書いたのは感想文ではない」と言われたからです。
この「読書散歩」も
「本を読むきっかけを、なぜこの本を読もうとおもったのかを」
ということから始まりました。
今までも本のなかで気になった部分を紹介してきましたが、
今回も素晴らしい表現に出会うことができました。

例えば、
 
 柳の下から堀をのぞいた。
 大きな鯉が墨汁を滲ませたような鱗をぬめらせ泳いでいた。

とか、
 
 電柱にとまっていた雀たちが何に驚いたのかいっせいに飛び立ち、
 五線譜を駆ける音符のように千々に乱れて田圃の上を渡っていく。

という表現は、まるで俳句ではないですか。

「墨汁を滲ませたような鱗」とか、
「五線譜を駆ける音符のように千々に乱れて」等に
出会った時は、付箋を貼ってしまいました。


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かのこちゃんとマドレーヌ夫人
万城目学 角川文庫


「偉大なるしゅららぼん」に続いて、
図書室にあった万城目学さんを読んでみました。

この本は、
 
 四角い空き地に生い茂る背の低い草たちが、
 風もないのにさわさわと靡いている。
 まるで海に描かれた航跡のように、
 一本の淡い線が緑のじゅうたんを走る。
 草の葉がかさこそと揺れ、驚いた羽虫がぶうんと飛び立つ。
 朝の光を浴びようと、薄紅色の小さな花が
 せいいっぱい穂先を差し出すその根元を、
 丸い影が軽快な動きとともに通り過ぎた。

という素晴らしい書き出しから始まっています。

朝早くに妻と散歩をしていて、
ワレモコウの葉の縁に
朝露が付いているのを見つけました。
その朝露が朝日を浴びて虹色に、
それも微妙に違った色で輝いており、
思わず手にしたカメラで写真を撮ってしまいました。
朝日を浴びていない朝露をよく見ると
背景がさかさまに映っているが分かります。
その時にこの書き出しを思い出しました。
朝の楽しいひとときです。

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タイトルのマドレーヌ夫人とは
突然ふらっと現れてかのこちゃんの家に
いついている猫の名前です。
かのこちゃんの家で飼っている犬の玄三郎、
公園に集まってくる猫たち、
かのこちゃんと同じ学級のすずちゃんの関係が
非常に興味深く描かれています。

いつものように万城目学さんの作品は
奇想天外な設定が多いのですが、
今回も玄三郎とマドレーヌ夫人が夫婦で、
マドレーヌ夫人が「猫股」
つまり尻尾が二本に分かれた化け猫に変身します。
しかしマドレーヌ夫人は、公園の猫たちのために、
もう一回はかのこちゃんへの恩返しのために人間に化けます。

悲しい別れもありますが、全編を通して、
人や猫や犬がお互いを思いやる気持ちを感じる
あたたかい小説です。

この本の解説が、万城目学さんと解説者との関わりを
編年調で書かれている今までにないものであるのも
面白く感じました。

読書散歩 #82

読書散歩 第82回
日本人が大切にしてきた自然

古来、私達日本人は自然を大切にし、
自然を愛してきました。
一方で自然の持つ大きな力には、
畏敬の念をいだいてきました。

日本語では自然を表現する
たくさんの言葉が残されてきています。
私たちのまわりでも多くの自然が失われ、
それとともに美しい自然を現わす言葉も
忘れ去られようとしています。

今回は、自然を現わす本を紹介します。
観天望気(かんてんぼうき)という言葉も
あまり使われなくなりましたが、
風・雲・雨など日常の変化を観察して、
日本人が培ってきた自然に対する思いを
感じ取ってほしいと思います。



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風と雲のことば辞典
倉嶋厚 監修/岡田憲治、原田稔、宇田川眞一 著
講談社学術文庫

この本は、たまたま本屋さんに行った時に
見かけて買いました。

風や雲に関する言葉は多くあります。
有名なのは菅原道真の

「こちふかば においおこせよ うめのはな 
 あるじなしとて はるなわすれそ」

の、「こち」が東風のことであることは
古文の時間に習った方も多いのではないでしょうか。

私が兵庫県立豊岡高等学校に赴任している時にも
但馬地方の気象に関わることを多く教えていただきました。
雨や雪の多いことから「弁当忘れても傘わすれるな」とか
初冬の冷たい風の事を「うらにし」ということも
教えていただきました。

この辞典でさっそく「うらにし」を調べてみました。

 うらにし【浦西風】
  晩秋から冬にかけて、京都府の日本海側、
  北陸地方などで吹く北西または
  南西の<季節風>。今風にいえば<シベリア風>か。
  海は時化(しけ)て、漁業が出来ない。

とありました。但馬地方は
京ことばが残っていることがありますが、
豊岡市の東はすぐ京都府ですから、
この「うらにし」も伝わってきたのだと思います。

後ろに雲や風に関する
ことわざや慣用句がまとめられています。
また、季語としての索引もついていますから、
俳句を考える時にも役に立つのではないかと思っています。



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雨のことば辞典
倉嶋厚、原田稔 著 講談社学術文庫

この本は、先に紹介しました
『風と雲のことば辞典』と一緒に買いました。
近頃天気予報などでも「ゲリラ豪雨」という
言葉を聞くことも多くなりました。
以前は使われなかったこのような言葉は、
気候変動によって新しく生まれた言葉です。

まず興味をひいたのが、「原本まえがき」で、

「日本人一人あたりの傘の平均所有本数は、
 男一.八本、女三.五本で四、五人家族の家庭に
 一〇本の傘があるのが普通だという。」

と紹介されていることでした。
なるほど、自分のことを考えると、
自分用の傘は、大きなさし傘と折り畳み傘、
自動車にも職場にも置き傘があり、
書かれている本数を
はるかに超えた傘を持っていることに気が付きました。

芭蕉の句に「五月雨を 集めて速し 最上川」があります。
この本で「五月雨」をひいてみますと、
  
  さつきあめ 【五月雨】
  陰暦の五月ごろじめじめと降りつづく長雨。
  『梅雨』『五月雨(さみだれ)』と同意。

と書かれています。そのあとに、
正岡子規の俳句と夏目漱石の俳句が紹介されています。
「雲と風のことば辞典」と同じように、
雨に関することわざや慣用句、季語の索引も付けられています。

「雨が降る日は天気が悪い」ということわざは
「きわめて当然のこと、わかりきったこと」の意として
使われることも紹介されており、なかなか面白い本です。

図書館司書の読書だより #7

図書館司書の読書だより 第7回
東館の仮図書室

仮図書室_convert_20180509135612

図書館司書の岩崎東里です。
東館の図書準備室での仮図書室の起動から、1ヶ月が経ちました。
東館には木のぬくもりがあって、
図書室のある場所としてとても気に入っています。

まだ、ほとんどの本がダンボールに入ったままの状態ですが、
図書部の部員たちと協力しながら
また新たな図書室づくりを目指して頑張りたいと思います。

インドネシアの留学生が日本語を勉強するスペース_convert_20180509135550
このスペースではインドネシアからの留学生が日本語を勉強しています。

新聞閲覧スペース_convert_20180509140334
ここは新聞閲覧スペースです。
プロフィール

兵庫県播磨高等学校

Author:兵庫県播磨高等学校
2021年に創立百周年を迎える兵庫県播磨高等学校です。
「読書の学校づくり」を推進中です。

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