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読書散歩 #80

読書散歩第80回
日本の文化に関わる3冊

大げさに「日本文化に」というタイトルを
つけてしまいましたが、最初は染色の話です。

色の話は、第64回の「『和の色』との出会い」でも
触れましたが、今回は読んであたたかな気持ちになれる小説です。
また、澤庵という人の話、
日本文化の「わび」「さび」に関わる話を紹介します。


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晴れ着のゆくえ
中川なをみ 文化出版局

この本は神戸新聞NEXTで紹介されていました。
その紹介文には「持つ人の心が宝物を輝かす」とあり、
冒頭には「読み終えて、ふう、とため息が出た。」
とありました。

しばらくそのままになっていましたが、
姫路市立図書館に他の用務で伺った時に借りて読みました。
「紫根染め」の晴れ着と「茜染め」の長襦袢の話です。

実は今年、そのむらさき草が
我が家の庭で花を咲かせました。
それで、読んでみようと思ったのです。
むらさき草の花は何色かご存知ですか。
花は、白い色をした小さなかわいらしい花です。
染料のむらさきは、
むらさき草の根から採れるんです。

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庭に咲いたむらさき草の花です

おじいちゃんが孫のために力を込めて
「むらさきの着物」を作り上げます。
紫の染料も、孫と一緒に育てたむらさき草で作ります。

おじいちゃんがつくってくれた着物は、
おばあちゃんのつくった
茜色の長襦袢とともに日本を離れます。
途中で「むらさきの着物」は
「茜色の長襦袢」と別れて旅をします。

それぞれの章は、その着物にかかわった人の名前で書かれています。
千恵、ともの、春子、アネット、
ハンフリー、カトリーヌ、しをり——という
それぞれの章の主人公は、やさしい心の持ち主で
その「むらさきの着物」を大切にします。

脚注に、
 一 千恵    一九五一年夏
 二 ともの   一九五一年冬
 三 春子    一九五四年春
 四 アネット  一九五八年春
 五 ハンフリー 一九六〇年秋
 六 カトリーヌ 一九八〇年秋
 七 しをり   二〇一三年秋

と章の名前が書かれており、年の経過を感じながら読み進めることができます。

テーブルセンター、ティーポットカバー、小ぶりのスカーフ、
大小さまざまなポーチ等に姿を変えますが、
年老いた最初の持ち主である千恵の手元に帰ってきます。

やさしい心の持ち主の心温まる話に
ゆったりと浸りながら読むことができました。
紹介文の冒頭の
「読み終えて、ふう、とため息が出た。」、まさにそのとおりでした。


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沢庵
水上勉 中公文庫


澤庵和尚の事は以前から興味がありました。というのも
柳営御物の澤庵和尚の軸を拝見したことがあり、
また、この本の参考文献の最初に出ている
「澤菴和尚全集」全6巻が手元にあり、
時々読んでいたこともあったからです。

「澤菴和尚全集」は、
なかなか読み込むことができずに悩んでいました。
澤庵和尚の本は、この全集の他に、
徳間書店の「沢庵不動智神録」、
岩波文庫の「澤菴和尚書簡集」も読みました。
一度、澤庵和尚の生涯を書かれたものを
読みたいと思っていたからです。

澤庵和尚は墓も作るな、伝記も書くなと遺言を残しています。
その遺言に反して武野紹鴎(たけのじょうおう)の孫である
武野宗朝(たけのそうちょう)が
「東海和尚記年録」という伝記を残しています。
水上勉さんのこの本は、澤庵和尚の遺言にそむいて書かれた
「東海和尚記年録」という記録に、
澤庵の周りの人々の事を多くの資料をもとにして書かれています。
武野宗朝に感謝します。

もともと「東海和尚記年録」も関連の資料も漢文であったり、
難しい文語調ものですが、
私が読んでも分かるように書かれており、興味深く読み進めました。

題名に「東海」とついていますが、
澤庵和尚は徳川三代将軍家光から
「東海寺」を与えられ住職として住んでいたからです。
この東海寺については品川区教育委員会が発行した
「品川区史料(九)東海寺の文化財」という冊子があります。
これは非常に面白い冊子です。

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「品川区史料(九)東海寺の文化財」

東海寺の輪番僧が記録した「重書」が復刻されています。
この「重書」には輪番僧が
京都から江戸に下るまでの様子などが書かれており、
元禄、安政時代に起こった大地震、
嘉永の時代に浦賀にきた黒船来航の話まで、
さまざまな事件や自然現象が記述されています。

それにしても澤庵和尚の姿勢は、名誉などを全く考えず、
また、権力にも屈することなく自分の考えを貫きます。
徳川幕府から「紫衣事件」で流罪になりながら、
家光からの厚遇に対する想いなど、
いろいろと考えさせられます。

この文庫の表紙が「荒磯金襴」だけという装丁も
非常に気に入っています。



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日本の文化をよむ 5つのキーワード
藤田正勝 岩波新書


私の趣味の一つが茶道であることは、
何回か話をさせていただきました。
茶道を始めたきっかけも、
高校時代の日本史の先生の
「君たちは日本人なんだから、何でもいいから
  日本の伝統文化の一つくらいは知っておきなさい。」
という一言でした。

大学時代に茶道を経験したことは、今、
兵庫県播磨高等学校が推進している
「国際教養人の育成」で、
海外の姉妹校との交流に非常に役に立っています。
自国の文化について話をするときに、
茶道を経験したことで、自信を持つことができます。
今になって日本史の先生の一言を嬉しく思い出します。

芭蕉の「笈の小文」の
 「西行の和歌における、宗祇の連歌における、
  雪舟の絵における、利休が茶における、 
  其の貫道する物は一なり。」
という言葉を思い出したことも
この本を手に取った一つの理由だと思っています。

この本は、
「西行の『心』」、「親鸞の『悪』」、
「長明と兼好の『無常』」、「芭蕉の『風雅』」、
「西田幾多郎の日本文化論」に分けて書かれています。

西行の、
 「吉野山梢の花を見し日より 心は身にも添はず成りにき」
と詠んだ心。
親鸞の、
「悪人成仏のためなれば、
 他力をたのみたてまつる悪人、
 もつとも往生の正因なり」
という悪人正機。

鴨長明の
「ゆく川の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。」
で始まる方丈記。

兼好の、
「つれづれなるままに」
で始まる徒然草。

世阿弥の、「風姿花伝」。

芭蕉の「奥の細道」。

仏教、芸術、哲学と様々なジャンルが絡み合ったように
話は進んでいきますが、
一つの流れにそって言っておられるように思います。
それが「笈の小文」の続きに芭蕉が述べていることでしょう。

 「しかも風雅におけるもの、造化にしたがひて四時を友とす。
  見る処花にあらずといふ事なし。
  おもふ所月にあらずといふ事なし。
  像(かたち)花にあらざる時は夷狄にひとし。
  心花にあらざる時は鳥獣に類(たぐい)す。
  夷狄を出て、鳥獣を離れて、造化にしたがひ、
  造化にかへれとなり。」

 「我々が生きている、意識しているのは、富であり、立身出世である。
  花ではない。そのためには意識を変えなければならない。」

と言っているのだろうと思います。
しかし、日常の生活で常にそのような思いを持つことは
不可能に思います。
生活のなかで四季折々の自然を
ちょっとした時に、ふっと思ってみること、
そのことも非常にむずかしいと思いますが、
そうできたらと感じた一冊でした。
プロフィール

兵庫県播磨高等学校

Author:兵庫県播磨高等学校
2021年に創立百周年を迎える兵庫県播磨高等学校です。
「読書の学校づくり」を推進中です。

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