副校長の読書散歩 #48

シーボルトと幻のアジサイ

Selected by 安積秀幸副校長先生


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今、我が家の庭にアジサイの一種の
シチダンカ(七段花)が清楚な花を咲かせています。
このシチダンカは幻のアジサイと呼ばれています。

なぜ幻なのか。

実はシーボルトが著した日本植物誌(フローラ・ヤポニカ)には
このシチダンカが紹介されているのですが、
日本国内ではその後見つからず「幻のアジサイ」と呼ばれ続けていました。

しかし昭和34年7月5日、当時六甲山小学校に勤務されていた荒木慶治氏が
六甲ケーブル西側の谷筋で発見されたのです。
その後挿し木などで増やされ、その一株が我が家にやってきてから
20年以上になりますが、毎年花を咲かせてくれています。

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そのシチダンカにかかわる本を紹介しましょう。









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先生のお庭番
朝井まかて 著(徳間書店)


シーボルトが出島に作った薬草園を任されていた熊吉は、
シーボルトにはコマキと呼ばれています。
シーボルトが日本の植物の研究のために日本全国から集めた植物を栽培し、
生きたままオランダに運ぶためにいろいろと知恵をしぼります。
奥さんのお滝さん(オタクサ)や使用人のおるそんとの生活が
興味深く描かれています。

シーボルトは気に入ったアジサイに
奥さんと同じ「オタクサ」という名前を付けます。
強烈な嵐がきっかけで
シーボルトが日本地図を持ち出そうとしているのが発覚し、
いわゆる「シーボルト事件」が起こります。

シーボルトが日本をどのように感じ、どうしようとしていたのか。
オランダよりアメリカやイギリスが力をつけてきている時代に、
それぞれの国にどのように働きかけようとしたのかが書かれています。
再びシーボルトが日本にやってきて、
娘の以祢(いね)を通じて熊吉に「フローラ・ヤポニカ」を届けます。
その植物を回想する中でシチダンカが初めて出てきました。











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日本植物誌 シーボルト[フローラ・ヤポニカ]
シーボルト 著
解説:木村陽二郎、大場秀章(八坂書房)


我が家にシチダンカがやってきてしばらくして、
この日本植物誌が出版されました。
早速買い求めました。

シーボルトが気に入っていた
「ハイドランジア オタクサ」が表紙を飾っています。
八坂書房は植物関係の素晴らしい本を数多く出版されています。
しかし、残念なことにシチダンカはカラーでなく
白黒で掲載されていました。

解説には「シーボルトと植物学」「シーボルトの『日本植物誌』」の
2編が掲載されています。
シーボルトを取り巻く日本の門人たちや、シーボルトの日本への関心、
帰国後の活動がよくわかります。







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シーボルト日本植物誌
シーボルト 著
監修・解説:大場秀章(ちくま学芸文庫)


この本は2007年(平成19年)に刊行されています。

八坂書房の『日本植物誌』は
シチダンカがカラー印刷でなくて残念に思っていましたが、
この本にはカラーで紹介されています。

また、一つ一つの植物画に詳しい説明が書かれていて
植物図鑑としても活用できます。
植物画を描いた川原慶賀のことも
八坂書房版と同じように詳しく書かれています。

それにしても、植物画は本当にていねいに書かれており、
彩色も素晴らしいものです。
写真ではない、美しい絵も楽しんでいただければと思います。








* 「副校長の読書散歩」とは?

図書館大改造

広々とした空間_convert_20150617152031

こちらの写真は、
図書館の中に一歩足を踏み入れたときに
目に入る風景を写したものです。


そしてこちらは、数ヵ月前に撮ったもの。
官兵衛特集_convert_20150617153408


細い柱の向こうのスペースを見比べていただくと……
机の変化にお気づきいただけるでしょうか。



今月のはじめに、机の仕切りを全て外して、
広々とした空間に
見通しのよい大テーブル席を設けました。

グループ学習はもちろん、
友達と一緒に読書やちょっとした作業を楽しみたいときにも
ぜひ使ってもらえたらと思います。
テーブルの配置は、要望に合わせて、
自由に変えることができます。

館内奥には、これまでどおり仕切りのついた
学習スペースがありますよ。



◆1枚目の写真で左手奥に見えるスペース。
 「播磨の100冊」から一部を紹介しています。

播磨の100冊紹介_convert_20150617152837


◆たっぷりの光を浴びる大テーブルに、
 スイーツやお弁当のレシピ本のほか、新着図書をディスプレイしてみました。

新着図書やスイーツ・お弁当のレシピ本を並べてみました_convert_20150617152812


◆今年の青少年読書感想文の課題図書2冊です。
 「海」を目印に見つけてください。

テーマは海(課題図書と一緒に展示)_convert_20150617151953


◆手芸部の作品が集合する穴場スポットです。
 このなかに、かたつむりと紫陽花が隠れていますよ。

穴場スポット_convert_20150617152010


◆姉妹校の皆さんをもっとよく知るための
 ヒントはここにあります。

姉妹校コーナー_convert_20150617152739


◆小さな女の子が見とれているのは…
紫陽花と女の子_convert_20150617152753


◆ようこそ図書館へ!
 利用ガイダンス以降、1年生の利用も増えてとてもにぎやかです。

入り口のボード_convert_20150617152824

副校長の読書散歩 #47

朝井まかてさんの時代小説3冊

Selected by 安積秀幸副校長先生


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久しぶりに気楽に読める時代小説が読みたくなって図書室に行きました。

関西弁のタイトルが目につき、読み始めました。
以前に紹介しました高田郁さんの「みをつくし料理帖」シリーズとは違った
シャープさのある時代小説です。
岩崎先生に伺いますと、この本は
この3月で退職された西澤繁先生の寄贈との事でした。

今回紹介の3冊には、歴史上の実在人物の名が出てきます。

岩崎先生がこの3冊以外にも持っておられるので、
お借りして読んでみようと思っています。








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ぬけまいる
朝井まかて 著(講談社)


一膳飯屋の娘お以乃、御家人の妻お志花、小間物屋の女主人お蝶は、
「馬喰町の猪鹿蝶」と呼ばれた江戸娘三人組だった。

3人の名前もちょっとふざけた名付けであり、
お以乃の恋の相手が「清水の次郎長*」であったり、
とにかく奇想天外な展開が続く時代小説です。

それぞれ三十路にさしかかった3人が、
「お蔭詣り」とか「抜け詣り」と言われている、
伊勢参りに突然出かけることになります。
3人が3人ともそれぞれに思い悩みながら「ぬけまいり」を始めますが、
その中での3人のお互いを思いやる気持ちもなかなか気が利いています。
江戸っ子の粋な立ち居振る舞いが面白さをさらに高めています。

久しぶりの時代小説を楽しませていただきました。

*清水の次郎長:
幕末から明治時代にかけて、任侠(にんきょう)の世界に生きた人物。
面倒見が良く、弱き者を助け強き者を挫く“天下の大親分”と呼ばれました。








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すかたん
朝井まかて 著(講談社)


「すかたん」というあだなをつけられた
天満青物市場の頭取を務める「河内屋」の若旦那。
江戸の饅頭屋の娘だった知里は、
河内屋のお家はん(女主人)のお付となります。

すかたんの若旦那は、実は野菜を作っている農家の人の事を
本当に大切に思って様々な行動をしますが、
青物市場の問屋の一般的な発想と違っており、
いろいろと問題をおこします。

知里と若旦那の恋の進展とともに話が進みます。
幻の蕪を探し回りますが、
これは伊藤若冲*の絵がきっかけになっています。

お家はんが知里に言った

「仕事いうもんは片づけるもんとちゃいます。
 どない小さなことでも、
 取り組んだ物事の質をちょっとでも上げてこそ仕事や」

という言葉は、私には耳の痛い言葉です。

*伊藤若冲(いとう じゃくちゅう):
 江戸時代の京において活躍した絵師。
 明治時代以降、生前ほどの知名度をなくした時期もありましたが、
 近年、アメリカ人収集家ジョー・プライスによって、
 その作品は再び脚光を浴びています。
 若冲の作品には、蕪や大根といった野菜が、多く登場します。







西鶴

阿蘭陀西鶴
朝井まかて 著(講談社)


江戸時代、俳諧や『好色一代男』や『世間胸算用』等の
草紙で一世を風靡した
井原西鶴の娘「おあい」の物語です。
盲目のおあいを母親は、
自分の死後も生きていけるように厳しくしつけます。
母親の死後二人の弟は養子に出されますが、
おあいは父西鶴のもとで生活します。
遊び歩いている父親が大嫌いだったおあいは、
『好色一代男』の原稿を書くための淡路への旅についていきます。
その時についてきた辰彌と浜での会話の一節を紹介します。

「けど、どちらさんもいろいろあるんやなあ。
結構なご身分に見えているのに」

辰彌の声が風に流れて、語尾が曖昧になった。

「やめて。可哀想がられるの、一番、厭や」

すると辰彌は呆れたように、「阿呆か」と吐いた。

「あんたのことやないわ。井原先生が気の毒やと言うたのや」

そして言葉を刻むように、ゆっくりと言った。


「あんたのことが可愛いて自慢でたまらんのは、
傍で見ててもようわかる。ほんの数日、一緒におるだけでな。
けど、それがあんたにはちっとも伝わってないのやもの」


ここから新たな展開が始まります。





* 「副校長の読書散歩」とは?
プロフィール

兵庫県播磨高等学校

Author:兵庫県播磨高等学校
2021年に創立百周年を迎える兵庫県播磨高等学校です。
「読書の学校づくり」を推進中です。

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