スタートライン

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スタートライン

3年生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。

これからも本との出会いを楽しんで下さいね。
そして、本は著者の生き方を学び、
自分の知らなかった世界を知るきっかけになります。
それと同時に、心がほんわかするような、
優しい気持ちになれることだってあります。

時には悩み、苦しい時こそ、本のパワーを感じてみて下さい。
きっと、立ち直る勇気を与えてくれます。

それと同時に、「一歩踏み出す」「新しいことを始めるきっかけになった」と
言えるように実際に行動してみることも読書の一部です。

長田弘さんの「世界は一冊の本」という詩の中に
「人生という本を、人は胸に抱いている。」ということばがあります。
今、皆さんはスタートラインに立ったばかりです。
自らの信じる道を一歩ずつ歩んで行って下さい。
皆さんの活躍を応援しています。

最後に、一篇の詩を紹介します。




〈星野富弘さんの花の詩画集『鈴の鳴る道』より〉


 「百日草」 星野富弘


  美しく咲く
  花の根元にも
  みみずがいる
  泥を喰って
  泥を吐き出し
  一生土を耕している
  みみずがいる
  きっといる



この詩に初めて出会ったのは、中学の卒業式でした。
3年間の作文集の返却の時、ファイルを開くと
星野富弘さんの「百日草」の詩が書いてあったのです。
その時は、どういう意味なのか、何を私たちに伝えようとしているのか、
すぐには理解できませんでした。

しかし、自分の将来と向き合った高校3年生の時、
ようやくその意味を理解したのです。

「美しく咲く花」になるよりも、「みみず」のように、
自らの可能性を信じ、誰かのために、
支える力になる方が素敵だということを。





世界は一冊の本  鈴の鳴る道
左:長田 弘『世界は一冊の本 [definitive edition]』(みすず書房)
右:星野富弘『鈴の鳴る道』(偕成社)


副校長の読書散歩 #41

写本にまつわる2冊

Selected by 安積秀幸副校長先生

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昔の人は本を読むために大変な苦労をされています。
持っておられる方にお願いして借りて、自分で懸命に書き写しておられます。
私も以前に似たようなことをしましたが大変な時間と労力がいります。

お茶を始めたころ、
栄西が書かれた『喫茶養生記』上下2巻を読みたくて探しました。
塙保己一がまとめた『群書類従』にあることを知り、
卒業した高校の先生にお願いして高校の図書館から借りました。

当時コピー機があまり普及していなくて手で写すことにしました。
しかし、写すということは単に読むだけと違ってよくわかります。
漢字ばかりでしたが、なんとなく意味もつかむことができましたし
『喫茶養生記』と名前がついていますが、下巻はお茶の話ではなく
桑の話であることもわかりました。

写本にまつわる2冊の本を紹介します。









彫残

彫残二人
植松 三十里 著(中央公論新社)


平成20年11月16日の神戸新聞読書欄に紹介されていました。

主人公は林子平。
この小説は、林子平が『三国通覧図説』を
出版するところから始まります。

私の手元に、「嘉永辛亥霜月(1851年11月)写終ル」と書かれた
『三国通覧図説』の写本と『三国通覧輿地路程全圖』があります。
この写本と地図は、もともと米山徹先生が持っておられました。
10年以上も前になりますが、
東京へ出張して酒を酌み交わしながら
和綴じの本の話をしておりました。
突然こんな会話が始まりました。

「三国通覧図説と地図の写本を持っているよ。」
「そんな話今まで聞いたことがないですよ。」
「そりゃそうだ。言ったことがないからな。」
「先生、その本、私に下さい。」
「そりゃだめだ。何ということを言うんだ。」
「普通に言えば、私の方が長く生きています。
本にとって、欲しい欲しいと思っている人の手に渡ることが、
その本にとって一番うれしいことであって、
本にとっても本望なんではないですか。」
「その話は、なかなか聞くわけにはいかんな。」
「そんなことを言わずに、私に下さい。」

その後、会うたび、「下さい。」「だめだ。」の繰り返しでした。
「なかなかきくわけにいかんな」の「なかなか」に期待して、
5年間言い続けました。
とうとう米山先生も根負けされて
「しかたがないなあ。」ということになりました。

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米山先生からいただいた『三国通覧図説』の表紙


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『三国通覧図説』のはじめのページ


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蝦夷地(北海道のなかのアイヌ民族の居住地)を説明したページ。
オットセイ狩猟の図です。



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『三国通覧図説』の最後のページ。「写終ル」とあります。


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『三国通覧輿地路程全圖』の表紙


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『三国通覧輿地路程全圖』


ということで、『三国通覧図説』という文字を目にして、
この本を次の日に買いました。
発禁となった『海国兵談』の版木*を持っての
松平定信の追っ手からの逃避行の小説です。
しかし、『三国通覧図説』は
オランダ商館長が国外に持ち出したという説もあり
何人かの手を経て、フランス語に訳され、
『SAN KOKF TSOU RAN TO SETS』として
パリで出版されました。

ペリーが小笠原諸島の領有を主張した時、
林大学頭がこのフランス語訳の
『三国通覧図説』を突き付け、日本の領有を証明したとあります。
フランス語に訳された『三国通覧図説』を図書館で取り寄せていただき、
添付の地図はコピーさせていただきました。

私にとって、思いのこもった一冊です。

*版木:文字や絵などを彫刻した木の板で、印刷に用いるものです。









耳袋1  耳袋2

耳袋1 耳袋2
根岸 鎮衛 著/鈴木 棠三 編注(東洋文庫)



佐渡奉行から勘定奉行になった著者が、
巷の話の中で興味を持った話をまとめた随筆集です。

もともと江戸時代の随筆を読むのが好きだったところへ、
米山徹先生の知っておられる方が
『耳嚢』の写本を持っておられる話を聞き、
お借りしてスキャナーで読み取ることも許していただけるかどうかを
聞いていただきました。
快諾いただき米山徹先生から送っていただきました。
写本ですから崩し字で書かれており、読むのに大変時間がかかります。
スキャナーで読み取り、2部印刷して
米山徹先生とお借りした方にお渡しをしました。

東洋文庫本と写本を比較してみました。
写本は1冊でしたので、東洋文庫本の一部でした。
取り上げられた話の順番も大きく違っています。
写し取る方の興味関心によって元のものと違っているのも
興味深いものがあります。

読んでいて面白かった話には付箋を貼っていますが、
かなりたくさん貼っています。
「小刀銘の事」に初めて付箋を貼っています。
この話は、大石良雄(大石内蔵助)の小刀の話で
赤穂にまつわる話として貼ったようです。
私たちの感覚と違った観点で話を集められていますので、
話の中身と種類に大変魅かれました。

現代ものと違った古典を気軽な気持ちで読んでみませんか。



ダウンロード
現在は岩波文庫版がより入手しやすくなっています。




* 「副校長の読書散歩」とは?

副校長の読書散歩 #40

不易と流行

Selected by 安積秀幸副校長先生


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教育の世界においても「不易と流行」という言葉をよく聞きます。
時代の流れの中で変わってはならないこと「不易」と、
時代の流れに従って臨機応変に対応しなればならない「流行」が
絶えず求められています。

兵庫県播磨高等学校は、
「教養」をこの不易の1つとして推進しています。

今回は、「不易と流行」の「不易」に関する本を紹介します。








日々

日日是好日 「お茶」が教えてくれた15のしあわせ
森下 典子 著(飛鳥新社)


私の手元に黄檗山主道元仁明管長の書かれた、
この本の題名と同じ言葉の掛軸があります。

そのこともあり、この本を岩崎東里先生が
平成26年12月10日発行の「図書だより12月号」に
紹介されましたときに、読んでみようと思いました。
さっそくお願いして図書室からお借りして読み始めました。
読み終えて、茶道に興味のある人には是非読んでいただきたいと思いました。

なかなかテンポよく読み進めることのできる本でした。
お茶を習い始めてから現在までの
お茶に対する考え方の変遷を通じての
著者自身の人生録でした。

私も大学生の時にお茶を習い始めて
学生時代はお茶に没頭していたと
言っていいような生活を送りましたが、
就職してからはお茶の先生とも遠く離れ、
茶道部の顧問として時々顔を出す程度でした。
現在でも点前はほとんどしませんが、
休みの日には茶を点てて妻と一緒に飲んでいます。

季節の移ろい、自然とのふれあいはそれなりに感じていますが、
著者森下さんのように自然と一体となったような
感覚になったことはありません。
時々私は機会があれば、生徒の皆さんや、先生方には
「見るという気になってみないと何も見えませんよ。」と話をしていますが、
森下さんのように意識しなくても見える境地になるには
まだまだ遠い道程があるようです。

茶会や茶事の様子も書かれていますが、
書かれている背景や考え方は頭では分かっているのですが、
その雰囲気がいまだに好きになれません。
もっともっと修業が必要なようです。

「日々是好日」とかかれた軸を
今晩あたり掛けて眺めてみようかと思っています。


日々文庫
新潮文庫からも発刊されています。








幸田家

幸田家のしつけ
橋本 敏男 著(平凡社新書)



幸田露伴は大好きな小説家の一人で、
学生時代には文庫本を見つけては買って読んでいました。
最初に読んだのはやはり『五重塔』でした。
大学構内の生協で★1つ50円でした。

就職してからも、『露伴全集』が刊行されることを知り、
時間をかけて全巻そろえることができました。
と言いながらもほとんどが「つんどく」状態です。

現在は姫路市立図書館の職員をされている方で、
私が住んでいる町の図書館で館長をされていた方から
寄贈してほしいとの話がありましたが
お断りして、今も家の本棚に並んでいます。

この本は、鳥取のYさんから送っていただいた何冊かの1冊です。
幸田文が幸田露伴から教え込まれた
「しつけ」について書かれています。

著者は、露伴が晩年住んでいた家の近所に住んでおられました。
露伴の葬儀を目の当たりにしたことから親近感を覚えて
幸田露伴と幸田文の考え方や見方、教育の仕方を
延々と述べておられます。
露伴の考えをと言いながらも、
著者の考えを露伴のしつけを通じて書かれています。

本物を実際に見せて教えることと、
体で覚えなければならないこと、
つまり知識と体得は「教える」ことができるが、
もう一つ「育む」という大切なことがあると書かれています。
露伴の具体的な行動を紹介しながら、
どのようにすればいいかを考えさせられます。
露伴の一本筋の通った考えと行動に素晴らしいものを感じました。

兵庫県播磨高等学校も長年「教養」を導入し、
「形から入って心を育てる」教育を推進していますが、
参考にすべきことが多く書かれているように思います。






国家の品格

国家の品格
藤原正彦 著(新潮新書)


著者の藤原正彦さんは皆さんよく御存じの通り、
作家新田次郎、藤原ていさんの次男です。
数学者であり、独自の考えを書かれています。
姫路文学館の館長になられて、姫路とのかかわりの深い方です。
本校でも、講演をいただいたこともあるようです。

藤原正彦さんを推薦されたのは、以前に紹介した焼物の師匠です。
日本文化を大切にと常に言われている師匠は、
焼物の専門家ですが、
焼物だけでなく日本古来の模様や意匠にも歴史にも非常に詳しく、
いつも教えていただいております。
また、日本の文化を調べるにあたっての視点なども、
「これはこのような見方をすれば面白い。」と
見る視点を教えていただきます。

もう一人、先日学校へ来られ、
生徒に国際交流について話をいただいた方も、
国際交流をするには英語を話すことより、
日本語、日本の歴史等をよく勉強して、
自分を育んだ文化について自信を持って
諸外国の方と話ができないとだめだと
おっしゃっていました。

私も、生徒を引率して、何回か海外へ行きました。
その国の方と話をする機会もありましたが、
趣味の一つである茶道の話をし、
考え方や美について自分なりの考えを話すことによって
相手の方もきちんと対応いただけることが多かったように思います。

現地の日本人のガイドをしていただいた方も、
生徒には
「英語が話せてもだめ、
自分の考えや自分の国の文化について話せないとだめ。」
と教えてくださいました。
まさに、この本に書かれていることを直接教えていただき、
体験することができました。

たどたどしい英語ではなく、
もう少し自分の思っていることを
英語で話ができるように勉強をしてみようと思っています。




* 「副校長の読書散歩」とは?
プロフィール

兵庫県播磨高等学校

Author:兵庫県播磨高等学校
2021年に創立百周年を迎える兵庫県播磨高等学校です。
「読書の学校づくり」を推進中です。

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