副校長の読書散歩 #34

漱石と科学

Selected by 安積秀幸副校長先生

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夏休みも中ごろの8月上旬に鳥取のYさんから大きな荷物が届きました。
わくわくしながら開けてみますとたくさんの資料と本が入っていました。
Yさんには何回も登場いただいているのですが、
「副校長の読書散歩」もよく読んでいただいています。
今回お送りいただいた本にも、宮城谷昌光さんの文庫本が入っていました。
毎回、お話をするときは名前を明かすことをお願いしていますが、
「鳥取のYさん」すら書かなくてよいと言われます。
しかし、その話は却下です。
彼は本当にご自身の興味関心のあることに
好奇心旺盛に活動されています。
全くうらやましい生活を送っておられます。
いつも新しい視点の情報をいただきます。
今回も科学に関する面白い情報をいただきました。








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科学のこれまで、科学のこれから
池内 了 著(岩波ブックレット 岩波書店)


宇宙物理学者の池内了先生は姫路の出身の方です。
池内先生には、兵庫県立豊岡高等学校が
スーパーサイエンスハイスクールの指定を受けている関係で、
直接生徒と一緒に指導をいただいたことがあります。
穏やかな話しぶりですが、
しっかりとご自分の考えを述べておられました。

この本は、鳥取のYさんから送っていただいたものですが、
この本と一緒に平成26年6月10日の
朝日新聞の「リレーおぴにおん」の
「漱石と私」というタイトルのコピーが入っていました。
物理学者寺田寅彦が、漱石の「吾輩は猫である」の
寒月君のモデルになっていることは有名です。
その記事には、「吾輩は猫である」出てくる科学の話は
大体本当だということから漱石には科学のセンスがあったことや、
「改めて気づいたことは、漱石は科学を、物語として、文化として、
楽しんでいたということです。」
という一文が書かれています。
漱石は寅彦が通っている熊本第五高等学校の英語教師だったのですが、
その後の深い交流の中での影響だったと思います。

この本は、直接漱石とはかかわりはないのですが、
新聞記事との関連で紹介します。
この本を読んで感じたことは、現象をきちんと把握し、分析し、
自分の考えをはっきりと述べられていることです。
読んでいくうちに「なるほど」と感じ、
読み終えても素直に納得していました。
最初から、「その通り」と思う記述が次から次へと出てきます。
福島の原子力発電所の事故に対しても、
原発の専門家が何ら反省の意を示さないだけでなく、
あたかも何事もなかったかのように原発推進を積極的に
唱えていることが「専門家の野蛮性」であり、
複雑系の科学において、
「いかなる問題にも答えが出せるとの幻想」を抱き、
系全体を丸ごと考えていないと言っておられます。

また、STAP細胞にかかわる事件についても、
「新発見」、「世界初」、「世界一」を
重要視する科学者の考え方と、
それの伴う予算配分から述べておられます。
理研は、昨年のうちにSTAP細胞の
特許申請をしていることにも触れておられます。
「新発見」であることに小躍りして十分精査しないままに論文発表し、
共著者も丁寧にチェックしなかったことに
原因があると言われています。全く同感です。

科学(理科)にかかわる一人として、
改めてその姿勢を考えさせられました。
先日教科の会議でも先生方に読んでいただきたいと紹介しました。







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漱石と寅彦
志村史夫 著(牧野出版)


寺田寅彦全集は私の好きな全集の一つで、
東京神田の古本屋さんで見つけて
重いのを持って帰ってきたことを昨日のことのように思い出します。
今まで勤務してきた学校でも、
この全集の一節を式辞等で引用したことがあります。
様々な分野の科学をわかりやすく紹介し、
方向性をきちんと示しています。
関連のある事象を総合的に融合した解説が非常に面白く、
興味尽きることなく読むことができました。

この本『漱石と寅彦』の終章の次に「円融」と書かれた巴紋が描かれ
広辞苑の「一切存在はそれぞれ個性を発揮しつつ、
相互に融和し、完全円満な世界を形成していること。」
という文が紹介されています。
漱石と寅彦の関係をうまく図式化して言いあらわしていると思います。

漱石が熊本第五高等学校に赴任したのが明治29年4月、
寅彦は同じ年の9月に入学しています。
当時のこの熊本第五高等学校の校長が、
加納治五郎だったことも初めて知りました。
漱石と寅彦の出会いの始まりです。
著者はこのような出会いの確率はゼロに近いと書かれています。
師弟の枠を超えたかかわりが始まり、池内了先生の話にもあるように、
寅彦は漱石に大きな影響を与えています。

熊本第五高等学校では試験にしくじった学生のために点数をもらいに
担当先生の私宅を訪問してお願いをするという
「運動委員」という慣例的行事があり、
寅彦が親戚筋の学生のために漱石の私宅を訪ねたところ、
快く会ってくれたとあります。漱石と寅彦の交流の始まりでした。
私も学生時代に同じ下宿の友人が大学院にも合格し、
行先が決まっているのに単位を落としそうになり
卒業できないかもしれないという状況になりました。
その時に私は恩師米山徹先生の研究室に伺い
お願いしたことがありました。
この本に書かれていることと同じようなことをしたようです。
私は、米山徹先生には未だに教えていただくばかりの
不肖の弟子と思っています。

文系とか理系とかの枠にとらわれずに考える必要をひしひしと感じます。
池内先生の著書と合わせて読んでみてください。




* 「副校長の読書散歩」とは?

副校長の読書散歩 #33

故郷姫路の話題の2冊


Selected by 安積秀幸副校長先生

姫路TOP




姫路城大天守保存修理の工事も最終段階になりました。
毎日、以前より白い天守閣を電車の窓から見ながら通勤しています。

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*大天守保存修理工事中の姫路城


平成27年3月27日からは、再び一般公開される予定になっています。
近くに住んでいますと「いつでも行ける」という思いから
あまり足を運びませんが、これからも
世界中から多くの方々がお越しになることでしょう。

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今、姫路は本当に黒田官兵衛一色という感じです。
今回はたまたまこの姫路に関する
2冊の本をいただいたことから読み始めました。

平成26年、平成27年と姫路が注目されることが続きます。










戦国の知将

姫路が生んだ戦国の知将 黒田官兵衛
姫路獨協大学播磨総合研究所 編(神戸新聞総合出版センター)


この本は学校法人獨協学園が、NHKドラマ放映を祝して、
はりま歴史講座「姫路が生んだ戦国武将・黒田官兵衛」を開講し、
全10回の講座の講義録として刊行されたものです。
平成26年8月17日の神戸新聞の読書欄
「ひょうご選書」にも紹介されています。

「黒田官兵衛天下盗りの野望」
「福岡藩の藩祖・黒田官兵衛と初代藩主・黒田長政」
「黒田家の目薬と廣峯神社」「文学に描かれた黒田官兵衛」
「毛利家と播磨の豪族たちの帰趨」「黒田官兵衛と織豊系城郭」
「豊前国中津の黒田官兵衛」「官兵衛を支えた家臣団・黒田二十四騎」
「黒田官兵衛に学ぶ人間学」「軍師官兵衛知られざる実像」
「黒田官兵衛を語る――シンポジウム」――と幅広い内容で
様々な官兵衛像を知ることができました。

近頃、姫路市内ではどこに行っても、
黒田官兵衛ばかりで少し食傷気味な私です。
その中で興味を持ったのは、
「文学に描かれた黒田官兵衛」の中の一節です。

津軽藩4代目藩主の津軽信政から
思い出や噂話を聞書きした「信長公御譚」に、

  中国大返しの時に秀吉が暗い夜道を一心不乱に取って返している最中、
  誰かがその手をむんずと取って
  「藤吉郎、信長公が御生害されて嬉しかろう」と言った。
  真っ暗ですから顔が見えないけれども、
  秀吉には声でそれが官兵衛と分かったということだった。

とあります。それから14年後、

  慶長元年(1595)、
  大地震の際に、秀吉の建てた伏見城の御屋形が倒壊して、 
  秀吉が死んでしまったという噂が立ちます。
  もちろん秀吉は庭に難を逃れている。
  やがて夜が明けると、家来や大名たちが参内して、
  無事のお祝いを申し上げる。
  少し後れて官兵衛も秀吉の前に出てお祝いを申し上げると、
  秀吉は「昨夜は俺が死んだと聞いて嬉しかったろう」と言った。
  官兵衛には返す言葉がなかった。

と書かれていることが紹介されています。
官兵衛が天下を取りたかったという話と合わせて、
官兵衛と秀吉のかかわりのひとつとして
おもしろく読ませていただきました。

まだ少し、黒田官兵衛の話題が姫路では続くと思いますが、
どのような新しいことが発見できるのか楽しみにしたいと思っています。









姫路100

姫路城100ものがたり
中元孝迪 著(神戸新聞総合出版センター)


この本は神戸新聞で2009年1月から2012年12月まで広告スペースに
毎月2回連載された「白鷺の美翔――姫路城100物語」を加筆修正して
1冊にまとめたものと、あとがきに書かれています。

「歴史の中の姫路城」「素顔の城郭――『美』の秘密」
「城主列伝」「城下町『人模様』」の4部構成になっています。

「歴史の中の姫路城」「城主列伝」「城下町『人模様』」では
時間の流れの中での姫路城、
「素顔の城郭――『美』の秘密」では
空間的な広がりの中での姫路城が
分かりやすく説明されています。

見開き2ページに1つの話で構成されていることも
わかりやすく読める理由の一つでしょう。

空間的な広がりと時間的な流れという四次元で展開される説明、
それに加えて姫路城にかかわる人――と、
5つの次元で姫路城をとらえたこの本は素晴らしいと思います。

本当に面白い逸話を教えていただきました。
織田信長と池田輝政が乳兄弟だったこと、
姫路城と江戸城の構成が似ており、
姫路城が左渦郭式、江戸城が右渦郭式であることから、
城郭を設計した人たちのつながりが紹介されています。

姫路城の城主は通説と新設があるそうです。
通説では48人、新説でも37人、
江戸時代に限っても33人もの城主がいたことや、
その数は全国一であったことを初めて知りました。

「城下町『人模様』」では、
千姫、酒井抱一、鈴木其一等と歴史に登場する人物だけでなく、
城下の三人孝女、お菊、お夏・清十郎など
面白く読ませていただきました。






* 「副校長の読書散歩」とは?

「図書だより 9月号」

※画像をクリックすると、別画面にて表示されます。
  ズームアップしてご覧ください。


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September_P2

2学期が始まりました。

図書だより9月号です。
今号では、「読む姫路城」をテーマにした図書紹介のほか、
「読書カード」制度の導入にあわせて、
POP作成について特集しています。
プロフィール

兵庫県播磨高等学校

Author:兵庫県播磨高等学校
2021年に創立百周年を迎える兵庫県播磨高等学校です。
「読書の学校づくり」を推進中です。

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